事例:株式会社メルカリのビジネスモデルが簡単、お手軽、安心、安全な理由

今回は株式会社メルカリのビジネスモデルを研究してみたいと思います。

株式会社メルカリは、2013年に株式会社コウゾウとしてスタートしています。同年7月、フリマアプリ「メルカリ」を開始し、11月に現在の社名変更。その年の12月にはアプリが100万ダウンロードを達成しています。

翌年以降、第三者割当増資の実施により資金調達に成功。2014年米国に子会社、2015年には子会社株式会社ソウゾウを設立と、順調に成長を遂げています。

この「メルカリ」というサービスは、簡単、お手軽、安心、安全という評判ですが、サービスのビジネスモデルを見ながら、この理由を探ろうと思います。

メルカリのビジネスモデルは「マッチング型事業フォーマット」

フリマアプリ「メルカリ」を使ったビジネスモデルは、7つの事業フォーマットの中では「マッチング型事業フォーマット」に当てはまります。

マッチング型事業フォーマットの流れ

図にしてみると、次のようになります。

中央の緑色の人物がメルカリ、サービスの範囲は緑色の点線になります。

自分がいらなくなったもの(左側の商品)を売りたいと思っている人と、その商品を欲しいと思っている人(右側黄色の人物)の間に立ち、価格や状態、コメントや出品者の評価などを添えて信頼感を付与しつつ、商品の紹介・販売(サービス)を行っています。

サービスとお金の流れ

この時のサービスとお金の流れは次のようになります(青い矢印がサービスの流れ、赤い矢印がお金の流れ)。

ここでわかるのは、顧客と出品者がやりとりするのは商品のみで、売買のためのお金の流れついては、次のように、メルカリ側が管理しているということです。

  1. 顧客が商品を買う際、料金は一旦メルカリ側に支払う
  2. 売買成約が確認されると、その商品に対し、メルカリ側から出品者に支払いが行われる
  3. 出品者は販売手数料をメルカリに支払う

その結果、出品者が実際に受け取れるのは、価格ー手数料=報酬金額となり、メルカリ側はこの手数料で収益を上げることになります。

このビジネスモデルが優れているのは、使っているユーザーにはあたかもショッピングモールにいるような感覚で商品を選ぶことができますが、メルカリは単に仲介に立ちって売買の場を提供してあげるのみで、商品在庫を持つリスクが一切ないということです。

仕入れが無い分、いかに売り手と買い手の数を集め、両者をマッチングさせることができるかが、このビジネスモデルの特徴といえるでしょう。

似たような事例:ヤフオクのビジネスモデル

似たようなサービスにヤフオクがあります。同じように図で表し、メルカリと比較してみましょう。

サービスの流れとしては、メルカリのモデルと同じと言えます。中央の緑色の人物がヤフー、サービスの範囲は緑色の点線になります。

メルカリ同様、自分がいらなくなったもの(左側の商品)を売りたいと思っている人と、その商品を欲しいと思っている人(右側黄色の人物)の間に立ち、価格や状態、コメントや出品者の評価などを添え、オークション形式で購買意欲をあおりながら、商品の紹介・販売(サービス)を行っています。

ヤフオクの旧システムにおけるサービスとお金の流れ

この時のサービスとお金の流れですが、まずは現在のシステムになる前の、旧システムでの流れを見てみたいと思います。

メルカリと違うのは、ヤフオク自体は売買に直接絡まず、顧客と出品者が商品と料金を直接やりとるするということです。

旧システムでのキャッシュポイントは次の3つです。

  • 出品者の登録資格としてのYahoo!プレミアム会員費
  • 顧客の入札資格としてのYahoo!プレミアム会員費
  • 成約時の出品者の落札システムの使用手数料

オークションの場に参加する資格を得るための会員費という形で出品者からも購入者からも収益が見込め、さらに成約時のシステム使用料も入るという二本立てだったといえるでしょう。

興味深いのは、メルカリアプリが台頭し始めた2013年、「ヤフオク!0円宣言」を出し、同年10月7日以降、制限を大幅に緩和したこと、さらに2017年より出品時には「Yahoo!かんたん決済」というシステム設定が必須になったことです。

ヤフオク!新システムにおけるサービスとお金の流れ

2017年5月時点のサービスとお金の流れを表してみると、次のようになります。

以前は、プレミアム会員への入会義務、出品者の落札価格入金後のYahoo!ウォレットでの手数料の支払いがありましたが、支払いフローを行う際、Yahoo!かんたん決済を通すことで、出品者は手数料があらかじめひかれた報酬金額のみ受け取ることができるようになりました。

最初から簡単・お手軽を実現したメルカリ

ヤフオクが現在のシステムに至るまでに簡素化したのは以下の点です。

  • 出品時のプレミアム会員の縛り
  • 入札時のプレミアム会員の縛り
  • 落札システム利用のための手数料の支払い手続き
  • 落札システム利用のための、プレミアム会員と非会員との手数料の差

上記項目について、メルカリは最初から省略し、ヤフオクの「めんどくさい」を取り払う形で登場したため、多くのユーザーに受け入れられたと思われます。

ヤフオクにしてみれば、プレミアム会員費というキャッシュポイントを省き、決済サービスを一つ追加することになりましたが、「ヤフオク!0円宣言」を出したタイミングを考えると、手軽な取引が行えるメルカリの出現により、ヤフオク側もメルカリに揃える形で、料金体系とシステムを大きく変更をせざるを得なくなったと思われます。

利用できる年齢制限の曖昧さも、若者に受け入れられる要因かも

さらにもう一つの要素として、未成年者のサービス利用に関する制限があります。

ヤフオクの利用規約では、次のように記載されています(第8章 ヤフオク!ガイドライン「利用資格」より)。

一方、メルカリの利用規約は次の通りです(「第3条 本規約への同意及び本規約の変更」より)。

両者とも、未成年者のサービス利用にあたっては法定代理人の同意が必要としていますが、大きな違いは年齢区分による制限です。

ヤフオクの未成年者サービス利用制限

※年齢の明確な規定については利用規約参照

18歳以上 15歳以上 15歳未満
出品 法定代理人の同意により利用 × ×
入札 法定代理人の同意により利用 法定代理人の同意により利用 ×

メルカリの未成年者サービス利用制限

未成年
サービス 法定代理人の同意により利用

ヤフオク側は、出品できるのは18際以上で法廷代理人の同意がある者のみ、入札は15際以上で法廷代理人の同意があるものとしています。一方、メルカリ側は、未成年者でも出品も入札も法廷代理人の同意があれば、サービスが利用できるものとしています。

中高生のスマホ保有率増加により、メルカリは、ヤフオクが利用不可としているユーザー層にも受け入れられている可能性があるでしょう。

メルカリが謳う「あんしん・あんぜんなお取引」とは

ネットでのやり取りでユーザーが一番不安に思うのは、お互い面識のない中、確実に商品が届くのか、お金はきちんと支払われるのか、ということにつきます。では、メルカリは「あんしん・あんぜん」をどのように担保しているのでしょうか。

前にも見たように、メルカリもヤフオクも、決済時には第三者を仲介させています。これは、「エスクロー決済」決済と呼ばれる決済方法で、資金移動業の登録を行った業者が仲介に入るビジネスモデルとなります。

このビジネスモデルにおいて、購入者側と出品者側のメリットは次の通りです。

購入者のメリット

  • 代金支払いタイミングは商品状態を確認してから行われることから、商品未着や不備といったトラブルを回避できる

出品者のメリット

  • 商品発送のタイミングは購入者による決済完了後となるため、代金未払いのトラブルを回避できる

まさに「あんしん・あんぜんなお取引」を実現できるビジネスモデルで、多くのクラウドサービスで取り入れられるようになりました。以前は銀行などの金融機関でないと行うことができませんでした。しかし、2017年資金決済法の改正により、「資金移動業」として登録を行えば、エスクローサービスを提供することが可能となったわけです。

気になるのは、本記事執筆時点(2017年5月2日)、金融庁のサイト(参考:資金移動業者登録一覧)では、ヤフー株式会社の登録は確認でき、ヤフーのサイトでも明確な提示があったのですが(Yahoo!マネープラス(資金移動)についての資金決済法に基づく重要事項表示)、株式会社メルカリの名前は金融庁サイトにはみあたらず、メルカリのサイトでも見つけることができませんでした。おそらく資金移動業者の定義には当てはまらないという解釈で、加入していないものと思われます。

「離婚届」や「現金」が出品されるなど、なんでもありのフリマサービスとして受け入れられているメルカリですが、今後は社会的責任も問われることになるでしょう。ビジネスモデルとしてすばらしいだけに、立場を明確にし、事業を発展させていって欲しいものです。