作業 VS クリエイション

自分がまだ駆け出しクリエイターだったころ、某大手ソフトウェア会社のプロジェクトリーダーから、次の質問をされました。

「キミはいつも何のPC使ってるの?OSは?」

当時はMacintoshでのDTP全盛期だったので、会社から渡されたPCはMacintosh IIci、OSは漢字Talk 7.1。PhotoshopとIllustrator、Page Maker、QuarkXPressでDTP作業をしていました。

ただ、MacはあくまでもDTP専用機。業務としてのメインPCはDigital HiNote Ultraで、OSはMS-DOS 6.2でした。VzEditor、Lotus 123、桐、あとDOS画面でパソコン通信といった感じ。

あまりクリエイターらしくないなぁと思いながらも、率直にそれを伝えると、「それは良かった」と予期せぬお言葉をいただきました。

「新入社員にはPCを1台渡すんだけど、MacとDOSでは、使っている人の成長の度合いが全然違うんだよね。

1時間という枠の中で同じ作業をさせてみると、Macユーザー君は最初の数分でショートカットキーを覚え、キー操作を50分間くらい延々繰り返してる。一方、DOSユーザー君を見てると、最初の30分くらいパソコンの前で何やってるかわからない感じだけど、そのうちキーボードを打ってバッチ処理用のスクリプトを書き、最後の5分くらいでパソコンに処理をさせる。

確かに出来上がりは同じ。ただ、また同じような作業をお願いすると、Macユーザー君は再び1時間全部を使ってショートカットキーの連打しっぱなし、一方のDOSユーザー君は5分で作業が終わってしまう。

入社して三ヶ月もたつと、Macユーザー君はショートカットキーを全部覚えてしまい、生産性は頭打ち。でもDOSユーザー君は、作業はPCにさせて、その間に自分は別の仕事をしている。その差は歴然だよ。」

この時は正直何を言われているかピンときませんでしたが、つい先日、Read for Action ファシリテーター向けセミナーにて、司会の方から次のような話が出て、その時の自分とようやくつながりました。

「AIに奪われる仕事が発表され、戦々恐々としている人たちがいますが、むしろ自分はわくわくしている。
AIの登場により、人類は”ルーティン”という作業からようやく解放される。その空いた時間を、わたしたちはクリエイションに向けることができるようになる。」

20世紀後半、”Macユーザー=クリエイター”みたいなところがありましたが、今にして思えば、DOSユーザー君のような仕事の組み立ての方が、クリエイティブと言えるのかもしれないです。

2017年3月