事例:Airbnbはリスクを最小限に抑えながらビジネスモデルを進化させている

2017年5月22日、スウェーデンの公式観光機関Visit Swedenがスウェーデンの国全体をAirbnb(エアービーアンドビー)のリストに掲載することを発表し、話題になりました。(参考:Sweden Lists Entire Country on Airbnb

Airbnbの勢いは止まらず、日本でも民泊新法が施行されると、おそらく動きはさらに加速すると思われます。世界的注目を集めるAirbnbですが、今回はそのビジネスモデルを見てみたいと思います。

Airbnbのビジネスモデルは「マッチング型事業フォーマット」

Airbnb自体は、宿泊施設を直接提供しているわけではありません。宿泊したい人(ゲスト)と、空いている部屋を貸したい人(ホスト)をマッチングするサービスを提供しています。

マッチング型事業フォーマットの流れ

商品とサービスの流れを図にしてみると、以下のようになります。

中央の緑色の人物がAirbnbで、緑色の点線がサービスの範囲を表します。

サービスを提供するといっても、実店舗があるわけではありません。インターネット上で世界展開しており、空いている部屋などを持つホスト(左側)と、泊まる場所を探している旅行者(右側)をマッチングさせる、一種のプラットフォームと言えるでしょう。

サービスとお金の流れ

ではAirbnbのキャッシュポイントはどこにあるのか、以下の図で見てみたいと思います。

サービスとして、ホストはAirbnbに部屋情報を提供し、Airbnbはその情報をネット上に掲載、ゲストはAirbnbが提供する情報を元に予約します。

この時、Airbnbは決済代行も行っており、ゲストとホストの間で直接金銭のやりとりは発生しません。ゲストの宿泊料金はAirbnbが代行し、そこから手数料を差し引いて、ホストに振り込まれるという流れになっています。

ちなみに手数料ですが、以下の割合で、ホスト側とゲスト側の両方から取る形になっています。

ホスト側 宿泊料の3%をAirbnbへ支払い
ゲスト側 宿泊料の6~12%をAirbnbへ支払い

Airbnb 収益として、
ホストとゲストからの
手数料6~13%

民泊に関わる人材育成にも乗り出す

2017年5月26日の日経新聞記事によると、Airbnbがパソナと提携し、民泊産業の裾野を広げるべく、従来の仲介業以外に民泊に関連する業務代行の人材育成に乗り出すそうです。(参考:日経新聞「民泊担う人材育成 エアビー、パソナと提携 」)

業務代行の内容として紹介されているのは以下のものです。

  • 室内清掃
  • 集客用ホームページ作成

ただ、これらに携わる人材の育成研修については、パソナが担当すると思われます。一方のAirbnbは、以下の図のように、それらの人材を、民泊を運営するホストに仲介する「マッチング型事業フォーマット」のビジネスモデルとなると推測されます。。

Airbnbへの登録されているホストに対し、室内清掃や集客用HP制作などのサービスを提供し、リソースはパソナが提供するという感じでしょう。

その際、料金の支払いについてもホスト側のアカウントから決済され、そこから仲介業を差し引いた形でパソナ側へ報酬が渡されるといった流れが考えられます。ホスト側も、このサービスだけパソナと決済するのでは、手間がかかるので、すべてAirbnbのアカウントで済ませられればとても使いやすいサービスになるでしょう。

今回の提携ですが、日本法人のAirbnb Japanは、2014年に設立されたばかりのため、2017年の時点では人材育成を自社で行うためのリソースが確立されておらず、パソナと組んで業務代行業を始めるに至ったと思われます。また人材を仲介するとなると派遣業法も考慮する必要があり、リスク回避という意味でもパソナに任せた方が安全でしょう。

人材育成のキャッシュポイントが加わり、ビジネスモデルがさらに安定

従来のホストとゲストをマッチングさせるビジネスモデルと、今回の人材育成を絡めたビジネスモデルを組み合わせた図を描いてみると、次のようになります。

図からもわかるように、Airbnbにはキャッシュポイントが複数になっています。これにより、ビジネスモデルはより安定性が増したと言えるでしょう。

ただ、キャッシュポイントが増えたからといっても、Airbnbは、宿泊施設や室内清掃の人材を在庫として抱えることは一切していません。あくまで民泊事業のためのプラットフォームを提供しているだけです。

今回のパソナとの提携も加わったことで、最小限のリスクでキャッシュポイントが追加できたわけですが、他の予約サイトが簡単に真似できないことから、競合ゼロのビジネスモデルに進化したともいえるでしょう。

創業者はホテル業とは無縁の三人

今や時価総額1兆円に達したAirbnbですが、どのように創業したのでしょうか。Wikipediaの「Airbnb」から引用してみたいと思います。

当時、チェスキーとゲビアはサンフランシスコでロフトの家賃を払えず、部屋を共有していた。二人は3名が泊まれるエアマットレスを備え自家製の朝食を提供することで、居間を小さなB&B(英語圏における民宿/小規模宿泊施設)にした。
2008年2月、ハーバード大学卒業生で情報技術者ネイサン・ブレチャジックがAirBed & Breakfastの3人目の創業者として加わった[12]。会社の初期段階では、創業者たちは、宿泊の代替手段が少ない場所で目立つイベントを開くことに注力した。Airbedandbreakfast.comというサイトが2008年8月11日に正式に立ち上がった。

YouTubeにも「How AirBnB Started」という動画もありましたので、以下に共有します。

ブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアは美術大学RISD出身、ネイサン・ブレチャジックは情報技術者という、ホテル業とは無縁の3人ですね。

RISD出身のクリエイターとハーバード出身のエンジニアが、まさか世界規模の宿泊業に携わることになるとは想像していなかったでしょう。

彼らは自分たちの部屋と朝食を提供し、ホームページを立ち上げ、SNSなどを使って拡散し続けました。そして自分たちで資金を集め、数年で世界規模まで広がり、日本でも法人を立ち上げ、パソナと組むまでの大企業になったのです。

彼らはB&B、システム、マーケティングを、自分たちですべてフルスタックで行っています。未経験の業種へ参入していくにあたり、おそらく各開発段階での試行錯誤は大変だったと思われます。

ただ、日本の下請けクリエイターたちが多重下請け構造から脱却するヒントがここにあると感じています。元請けから仕事をもらうのを待っているのを卒業し、自らビジネスモデルを構築していく事業主クリエイターとして、アクションを起こしてみてはいかがでしょうか。