2017年後半、良品計画が無印ブランドのホテル「MUJI HOTEL」の開業を、中国の北京と深センで目指しているそうです。(日経「良品計画、「MUJIホテル」の潜在力」)
良品計画は、「無印良品」で知られるように、製造小売業として、衣料品、家庭用品、食品などの日常生活にかかわる商品を販売しています。ただ、ホテルという異なる業界に進出しようとしていますが、いったいどのようなビジネスモデルなのか、見てみたいと思います。
- ビジネスモデル研究については、一般社団法人シェア・ブレイン・ビジネス・スクール代表 中山匡先生の「失敗をゼロにする 起業のバイブル
」を元に行っています。
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「MUJI HOTEL」の後ろ盾は、小田急電鉄グループ
2016年10月27日の日経の記事によれば、この「MUJI HOTEL」は、小田急電鉄グループが良品計画と組んで開業するようです。(日経新聞「小田急と良品計画、中国に『無印』のホテル 」)
良品計画は、日本国内においては旅館業の営業は行っていません。旅館業経営のための、法令が指定する構造設備や人的要件に関するノウハウはもっていないと思われます。
一方、小田急電鉄グループは、鉄道事業の社名が付いていますが、不動産や商業施設など、幅広く事業を展開しており、ホテル業もその一つとして営んでいます。
つまりこのビジネスモデルは、小田急電鉄グループが中国にホテル進出するにあたり、自社のホテル業のノウハウだけでなく、中国で人気の無印ブランド力を生かす形で良品計画と組み合わせることで「MUJI HOTEL」をプロデュースした、「プロデュース型事業フォーマット」と言えます。
プロデュース型事業フォーマットの流れ
小田急電鉄と良品計画が組んだ「MUJI HOTEL」のビジネスモデルを図にすると、以下のようになるでしょう。
中央の緑色の人物が小田急電鉄であり、緑色の点線がホテル業を表します。
小田急電鉄は中国に自社だけでホテル業を開くことも可能だったと思われます。ただ、北京や深センでの成熟したホテル市場の中で差別化をはかるべく、無印良品ブランドの力を借りて、「MUJI HOTEL」をプロデュースしたと考えることができます。
この時のサービスとお金の流れは、単純に考えると次のようになると思われます。
ホテル業を営む小田急電鉄に対し、良品計画が自社ブランドを提供する形で協力し、無印良品の商品やデザインで設計された「MUJI HOTEL」を顧客に提供します。
顧客側は宿泊代をホテル業を営む小田急電鉄に支払い、小田急電鉄は良品計画にブランド使用料を払うといった流れが推測できます。
別の土俵で展開していくビジネスモデル
小田急電鉄と良品計画が考えているビジネスモデルは、単に北京や深センでの観光客にサービスを提供するだけではありません。宿泊だけにとどまらない、別の市場への展開を考えることができます。
小田急電鉄側の展開
- 中国人の宿泊客に日本の商品に馴染んでもらい、将来の訪日客へと繋げる
- 日本にいるMUJIファンの中国観光への呼び込み
良品計画側の展開
- 無印製品への購入へと繋げる
- 宿泊を通じ、商品を体験してもらうことで、更に無印ブランドの信頼度を上げる
単にホテル業という一つのキャッシュポイントだけでなく、別の「土俵」で展開でき、いくつものキャッシュポイントが見えてくるビジネスモデルと言えます。
さらに、この「MUJI HOTEL」が成功すれば、世界展開することもできます。良品計画は、世界的に無印良品旗艦店を持っているだけに、とても楽しみです。
気になるホテルとしてのグレード
「わけあって、安い」というキャッチフレーズではじまった無印良品ですが、次々とファストファッションが現れ、決して安い商品と言えなくなりました。しかし、世界的にMUJIブランドとして確立し、価格と品質が中間層に受け入れられているのも事実です。
その無印ブランドを活かし、ハイアットと提携している小田急が、「MUJI HOTEL」をどのグレードに設定するのか、中間層のMUJIファンとしては気になるでしょう。